SOUKEN
ENGINEERING
斜面安定効果
国立明石工業高等専門学校
土木工学(地盤工学)
鍋島 康之 教授
研究背景
従来、斜面崩壊の予防工としてはコンクリート吹付け工やコンクリート枠工のように法面をコンクリートで覆う工法 が一般的に採用されてきた。
そこで、現在ではコンクリート吹付け法枠工のような従来的な工法に代わり、斜面緑化が可能でしかも安全性の高い地山補強土工法が数多く提案されている。
しかし、この工法は斜面を安定させる効果は優れている反面、人口的な 構造物のイメージを強く与えるため、周辺の自然環境になじまないという欠点がある。
斜面緑化の可能な地山補強土工法に求められること
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高い安定性(土塊のすべり、表土の崩れ)
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緑化工の施工性
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施工の簡便性
-
上部工による地表面の押さえ込み
-
緑化工のためのスペース
-
簡単に施工できる部材の開発
法面緑化が可能な新工法の提案+経済性
プレストネット工法の基本構造と特徴
正面図
断面図
-
支圧板で鋼製ウイング部材を地表面に押さえ込むことによって地山の表層部分を拘束し、小規模な崩壊を防止する。
-
補強材(ロックボルト)頭部を鋼棒により格子状に連結することによって表層面を拘束し、補強材に作用する荷重を分散させる。
期待される効果
既往の地山補強土工法とプレストネット工法の比較
補強材
支圧板・受圧板
連結部材・上部工
緑化工
工法
プレストネット工法
ノンフレーム工法
ユニットネット工法
GET受圧板工法
ジオファイバー工法
ロックボルト
2000mm
正方形配置
支圧板:
直径700mm 円形
受圧板:
直径500mm 円形
PC鋼棒
正方形・対角線連結
ウイング(4枚)
250mm×750mm
可能
ロックボルト
2000mm
正三角形配置
支圧板:
直径550mm 三角形
ワイヤロープ
正三角形連結
可能
ロックボルト
2000mm
正方形配置
支圧板:
直径300mm 円形
ユニットネット
(鋼より線)
正方形連結
可能
アンカー
受圧板:
直径130~170mm
ポリゴンタイプ
244mm,290mm
スタータイプ
テコネット(高鋼線ネット)
対角線連結
可能
アンカー
または
ロックボルト
連続繊維
(施工する際に専門の技術が必要)
なし
可能
平成16年度 研究成果
ジオファイバー工法
1.仮想斜面による安定性の比較
初期応力状態
自重増加
仮想斜面に自重と等しい量の荷重を作用させ、地山の変位分布を求める
補強材の効果を
確かめる
-
無補強斜面
-
ロックボルト補強斜面
-
ロックボルト・支圧板補強斜面
-
ロックボルト・支圧板・ウイング・PC鋼棒補強斜面
自重応力状態での斜面安定性を比較
2.各種材料パラメータおよびモデル
弾性体のパラメータ
弾性係数
(kN/cm²)
ポワソン比
断面積
(cm²)
ロックボルト
支圧板
ウイング
2.1 X 10⁶
1.23 X 10⁵
8.25 X 10²
0.3
-
0.3
3.8
-
-
弾塑性体のパラメータ
弾性係数
(kN/cm²)
砂質土地盤
ポワソン比
内部摩擦角( °)
粘着力
(kN/cm²)
単位体積重量
(g/cm³)
500
0.3
20
0
1.7
有限要素法(FEM)による補強効果の確認
せん断試験による補強効果の確認
斜面ゾーン崩壊試験による補強効果の確認
平成17年度 研究成果
大型せん断試験機の概要
正面図
断面図
20段の積層鋼製枠で形成された土槽内に模型地盤を作成し、載荷装置によりせん断を行う大型せん断試験機を使用した。
上端より145mm下端より165mmの100mmの領域をゾーンせん断した。
模型地盤は豊浦標準砂を用いて、空中落下で相対密度が約75%になるように作成した。
平成17年度 試験ケース
1.補強効果の検討の5ケース
ウイング部材には押さえ込み効果の代わりとして200gのおもりを載荷した。
2.各補強部材のモデル化
補強材(ロックボルト)
真鍮丸棒
直径 3mm
長さ 320mm(4本)
(深さ300mmまで挿入)
厚さ 2mm
長さ 100mm×100mm
幅 20mm
アクリル板
鋼製ウイング部材
頭部連結部材(鋼棒)
真鍮丸棒
直径 2mm
長さ 150mm(4本)
212mm(2本)
受圧板
支圧板
モデル化していない
CASE 1
CASE 2
CASE 3
CASE 4
CASE 5
CASE1:砂のみ
CASE2:補強材のみ
CASE3:補強材+頭部連結部材
CASE4:補強材+ウイング部材
CASE5:補強材+ウイング部材+頭部連結部材
3.モデル
補強材
連結部材
補強材+ウイング部材
補強材+頭部連結部材
補強材+ウイング部材+頭部連結部材
ウイング部材
4.試験結果(せん断抵抗力)
-
砂のみの試験であるCASE1よりもCASE2~CASE5のせん断抵抗力が上回った。
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CASE2とCASE4、およびCASE3とCASE5の比較より、ウイング部材と上載荷重による表層拘束によってせん断抵抗力が増加することが確認できた。
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CASE2とCASE3、CASE4とCASE5を比較することにより、頭部連結による表層拘束によってせん断抵抗力が増加することが確認できた。
平成17年度模型斜面崩壊実験
1.実験概要
平成17年度模型斜面崩壊実験模型斜面の試料土はマサ土を使用し、含水比は14%前後になるように調整して高さ約200mm毎にプレートランマーにより締固めを行って、模型斜面を構築した。
2.実験方法
正面図
側面図
1:1勾配
木製枠の底板は斜面先から約500mmの位置を支点として可倒式になっている。このため、L字ジャッキを徐々に下げることで模型斜面を崩壊させた。
側面図
模型斜面
L字ジャッキ
木製型枠
模型斜面
3.ひずみゲージの位置
ひずみゲージの位置は補強材は図に示すように貼り付け、頭部連結部材には部材の中心に貼り付けた。
地表面
正面図
補強材
頭部連結部材
4.実験結果(補強材)
-
CASE2では曲げひずみがほとんど生じていない。
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CASE3では下列に位置するNo.3以外に、上列に位置するNo.1にも曲げひずみが生じている。
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CASE4では下列に位置するNo.3に曲げひずみが生じている。
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CASE5ではすべての補強材に大きな曲げひずみが生じている。
5.実験結果(頭部連結部材)
CASE5に生じているひずみがCASE3に比べて比較的大きな値であることから、頭部連結部材にウイング部材を組合わせることによる影響が現れている。
変位90mmにおける頭部連結部材